Take Thatというバンドの話

90年代中頃、個人的に恐ろしくハマった英国初5人組グループがいた。当時は日本でもUSA発のニューキッズオンザブロックのブームが去り、彼らに代わってバックストリートボーイズがものすごい人気だった。曲もダンスもかっこいい、なのに自分には彼らは完全に「どーでもエー」存在だった。ハマる要素が見つからなかった。何がハマらないのか分からない。そんな時、偶然知ったTake That。もちろん曲、ダンス共に◎。全員のルックスも他のグループに負けず劣らず。こうやって書くと自分でも他グループとの違いが分からないが、単に自分の趣味嗜好がマッチしている部分がTake Thatには多く存在したのだろう。ボーイズグループに一人は存在する「なんであんたがメンバー?」がいなかったのも大きな理由。一つ顕著な違いはメンバーの一人ゲイリー・バーロウ Gary Barlowが結構な量の作詞作曲を担当している事。後にメンバー全員が曲作りに参加しており、才能溢れた感がみなぎっていた。ように見えた。

 

一番のお気に入りはマーク・オーウェン Mark Owenだったが、ライブビデオ(DVDが巷を席巻するのははまだまだ先の話)を見ているうちにすっかりロビー・ウィリアムス Robbie Williamsに心を奪われてしまった。彼の歌は信じられないくらいよく通る上にうまい。グループ全員で歌っていてもロビーの声だけがよく聞こえた。ステージでも一人だけ違うことをしようとしたり、とにかくやんちゃで手のつけられない、でも繊細そうなグループ最年少は、脱退してさらにスキャンダラスなゴシップをファンに提供し続けていたが、人気は今でも英国トップクラスである。ロビー脱退後、程なくしてTake Thatは解散した。このニュースを見たとき、「あ、なるべくしてなった」と思った。

 

Take Thatは5人でTake That。誰かが一人でも欠けてしまえば機能しない(今でいうと彼らは日本の国民的グループ・嵐のような感じかな〜)。度重なる素行不良のせいで事実上のクビだったとはいえ、私にはロビーが自分のキャリアのためには脱退しか道がなかったようにしか見えなかった。歌のうまさは自分でも認識していただろうし、ライブ中のトークにおいてもグループ一面白かった。10代で既に普通じゃないエンターテイナーだった。なのにグループの中心にいるのはいつもゲイリー。ロビーを目で追うようになってから改めてライブを見直すと、ゲイリーがいかに特別扱いされているかが分かる。ゲイリー自身もソングライターである自負も手伝って、そうでなくてはならないと思っていたに違いない。この彼の立ち位置は彼らのマネージャーの方針だったようだが、私にはそれがたまにウザかった。ロビーもそこに不満があったのではないかと思う。もっと前に出たかった。目立ちたかった。好きなようにステージでやりたかった。
逆にジェイソン・オレンジ Jason Orangeハワード・ドナルド Howard Donaldは歌よりダンスを得意としていたため、自分の立ち位置に不満を感じることは少なかったように見える。当時一番人気のマークは生来の平和主義的な性格によって、人気に奢ることなくメンバーとうまくやっていこうという雰囲気が伝わる。エエ子だ。。。
とにかく、Take Thatの解散は、ゲイリーの傲慢さとロビーの目立ちたがり屋気質が衝突した結果だと個人的に思っている。異なる二つの才能が違いを理解し合うには若すぎたのかもしれない。解散時、ゲイリー24歳、ロビーちょうど22歳。

 

余談だけどTake Thatが解散会見を開いたのはロビーの誕生日だった。なにそれ!?インタビュアーが「今日この(会見)日がロビーの誕生日だと知っていたか?」という質問をしたが「いや。。。そういえばそうでしたね」と知らなかったニュアンスで答えていた。ウソつけー!今でも意図的だったのか、偶然だったのかちょっと知りたい。もし偶然だったらすごくね?脱退した人の誕生日に解散会見するって何事?嫌がらせ?リスペクト?当時は悶々としたものです。

 

この会見から9年後、Take Thatの近況インタビューを収めたDVD(来たよDVDの時代が)が発売されるという情報を聞いた。なんでなんで?もしや夢にまで見た再結成が!?と早速購入しこわごわ見ると、ロビー以外の4人が集まってのインタビューだった。ロビーのインタビューも収められていたものの、一人だけ違う場所で別収録したものを4人が見る、という形だった。

このDVDでマークが3人にロビーへの態度を責めるような描写がある。どうもTake That時代、3人がいじめのような嫌な態度をとっていたのをマークは度々目撃していて、ロビー同様、3人より年下だったマークはそれを諌めることができなかったことを悔やんでいるようだった。ショーーーーック。このDVDには他にもファンにとってはショッキングなインタビュー内容(「たくさんのファンとエッチしました」だの「共演ミュージシャンとエッチしました」だの、エッチネタ・・・)がたくさんあったけど、私にはこの「ボーイズグループあるあるの一つ・いじめ」がTake Thatにも存在していたことが一番ショックだった。

 

2006年から再結成した4人Take Thatは事あるごとにロビーに向けて戻ってきてくれと呼びかけていた。低迷に苦しんだ時期を乗り越え、だいぶ痩せて更にイケメンになったゲイリーには昔の「ちょっと偉そう」感がなくなってて、わだかまりを修復したい気持ちがよく伝わってきた。私はというと、何度もTake That関連の記事を検索しては「ロビー古巣へ復帰」という文字を探していた。そんな記述は全く見つからず、そこからまた数年経って、やっと5人揃ったTake Thatを見たときは、長年夢見ていたことが現実になった奇跡を見ている気分だった。解散から実に15年ぶり。


残念なのは、ライブではTake That4プラスロビー感が否めない。ソロで大成功したため、4人と並ぶとゲスト感が出てしまう。それはもう変えられないのだと思うとちょっと寂しい。だいたいTake Thatと銘打ってのライブを開催するのなら別にロビーのソロ曲メドレーはいらなくね?と思うのだが、これはロビーがTake Thatのメンバーだったことをよく知らないファンのための演出なのか、単にどこまでも目立ちたがり屋のロビーの希望なのか。。。。端々でゲイリーがライブを行う上の演出でロビーに気を使っているように見えなくもない。
あとロビーの声に透明感がなくなった。なんだかガラガラ。歳のせいか不摂生か。変わらぬゲイリーの歌声を聴くといやーさすがプロだねって思う。

 

彼らを長く見てきた1ファンとしては、5人が同じステージにいるという事実だけで満足したほうがいいのかもしれない。贅沢な悩みなのかも。いずれにしても、こんな素晴らしいグループの最盛期から解散、再結成から現在までを見届けられたことは幸せだと思う。再結成後に全盛期と同じくらいのファンを獲得できるグループなんて稀有な存在である。かつてロビーが在籍していたグループ、というのも人々の興味を集めたのだろうけど、私が昔感じた「他のグループと何が違うのかわからないけど、でもやっぱり全然違う」というのはたくさんの人が感じているような気がする。